SEWグローバル・ウォーター・ナビ 欧州連合(EU)は、2015年までにEU内のすべての水域(河川水、地下水、沿岸水系)を科学的、生態的に健全な状態にすることを目的に2000年12月に「EU・水枠組み指令」を発効させた。加盟国には、欧州委員会の水枠組み指令を基に国内における水関連施策の法制化(国内河川管理の法制化など)や河川の水質分析の履行、水質分析に基づく水質改善の為の達成目標と行動計画の制定・公表などが義務付けられた。2015年の第一次目標年度を迎え、現在まで「EU・水枠組み指令」はどこまで達成されたのか、その後の水枠組み指令の動きはどうなるのか、その概要を述べる。1.欧州委員会 欧州委員会(European Commission)は欧州連合(加盟27ヵ国)の政策執行機関であり、委員会は法案の提出、決定事項の実施、基本条約の支持など日常の欧州連合の運営を担っている。いわば欧州委員会は加盟国から独立した立場で超国家的な権限を持つ機関として行動している。委員会は28人の委員(首相経験者5人、副首相経験者4人、閣僚経験者19人)による合議制で運営、一つの加盟国から1人の委員が選出され第3種郵便物認可 委員は自らの出身国より欧州全体の利益を代表することが求められている。現在の委員長は前ルクセンブルグ首相のジャン・クロード・ユンカー氏で各委員の任期は5年間である。 委員会は定められた基本条約や各種法令が各国で遵守されることを指導する義務を負い、状況により加盟国や他の欧州連合の機関を相手として欧州司法裁判所に訴訟を提起することができる。また欧州委員会は加盟国の共通外交・安全保障政策の遂行とともに、他の国際機関に対し欧州連合の外交を担うこともできる組織も有している。委員会による法案提出は通常、経済分野での規制に集中しており、その多くは予防原則に基づくもの第1803号 平成 27年10月27日(火)発行である。例えば「気候変動への取り組み」や「遺伝子組み換え作物の規制」、「水質の環境規制」などがあり、他の国家基準より厳しい規制を設けている。ある意味では厳しい規制を設けることにより欧州の経済権益を守る番人の役目も果たしていると言える。この欧州委員会はベルギー・ブリュッセルにあるベルレモン・ビルに置かれ、約2万5千人の職員を擁している。委員会の中では英語、フランス語、ドイツ語が作業用語として使われている。ベルレモン・ビルは先進的な構造で4つの翼が中心部で結合しており、上空から見ると十字架の形をしている。【写真】2.水枠組み指令 水の枠組み指令(WFD:Water Framework Directive) の歴史的な背景は、それまでの欧州各国の欧州委員会のビルと筆者(上の写真も)吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]~欧州・水枠組み指令の動向~07欧州連合(EU)の水質に関する環境政策
元のページ ../index.html#19