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第3種郵便物認可 流れ込み、水質汚染も進んでいる。主要な計画では、1ビリオンドル(約1200億円)をかけ海水淡水化事業(20ヵ所、年間造水量2億m3)や送水管整備事業などが挙げられている。4.農村・遠隔地向け第5次5ヵ年水供給計画(2010-2015年) 農村部や遠隔地向けの飲料水、廃水処理の計画が進行中であり約6400ヵ所の村が給水車による水供給を受けることが可能になった。五ヵ年計画の達成率は約77%とみている。しかし近年の干ばつの影響により、517都市が重大な水不足に直面し、給水能力より水需要(消費)が上回っている状態が2013年3月から継続している。 水不足に対処するため水を管轄するエネルギー省はさらに12の大規模水供給設備を含む130の水供給プロジェクトを2016年までに完成させようと375ミリオンドル(450億円)予算で計画を進めている。 その骨子は◦ 水資源の確保(ダム、海水淡水化)◦ 老朽化した水インフラの改善(ポンプ設備、配管整備)◦不適切な農業用水の削減◦ 再生水設備の増強と活用(約200ヵ所)である。5.首都テヘランの水事情 テヘラン市内へ水を供給しているダムは4ヵ所あり、その中でも容量の大きいラールダム湖(市内への供給率35%超)が枯れ始めている。本来9億6000万トンの貯水能力があるが、1800万トンの水しか利用できない状態が続いている。4つのダム湖を合わせても、昨年の40%の貯水率しかない。 同国エネルギー省によれば、「テヘランの給水人口はイラン全土の12%だが、イラン全土の水需要の25%を消費」している。また「世界の大都市の水使用の平均は約250リットル/日/人にも係らず、テヘラン市民は水不足の危機を理解せず、平均して400リットル/日/人使用している」と警告している。居住人口1200万人と言われるテヘラン市では、2014年9月、市内の水道大口利用者約3000顧客が7時間を超える給水制限を受けた。テヘラン市当局が、節水を呼び掛けているのに、まったく協力しない利用者への罰とも言われている。しかしテヘラン市内のバザール(市場)には野菜と果物が豊富に並べられている。 内閣府は、緊急事態として、タジキスタンから水輸入を計画し、約11ミリオンドル予算の議会承認を得ている。しかし水輸入交渉は難航している。 このままでは、テヘランの水不足は、さらに厳しさを増すであろう。6.あとがき‥水ビジネスの宝 経済制裁解除が報じられ、欧州諸国は積極的にイラン国内でビジ 第1799号 平成 27年9月1日(火)発行ネス展開を始めている。当然である。イランは天然ガス埋蔵量世界一、石油埋蔵量は世界第四位である。イラン石油相はインフラが整えば即座に400万バレルの石油生産が可能と表明している。制裁解除の日から、サウジアラビアを凌駕するオイルマネーがイランに流れ込んでくる。欧米諸国は石油やガスの巨額な国家収入を目当てに多くのインフラプロジェクト(電力、通信、高速道路など)を提案し、閣僚級の政府高官を派遣している。 日本の戦略とすれば、国民生活になくてはならない水問題解決に協力すべきであろう。水問題解決に必要な技術はすべて日本が保有している。例えばトンネルのボーリング技術や、水処理技術(下水処理や海水淡水化、再生水技術)などですべての課題をクリアできる。既に日本はイラン向け人道支援として医療や教育支援を行っている。水関連ではJICAを通じ、セフィードルード流域管理調査やウルミエ湖の水量・水質改善などに専門家を派遣し感謝されている。 親日家が多いイラン・イスラム共和国に向けて日本は積極的に水ビジネス展開を図るべきである。青果市場(安価で豊富な果物類)ブルーモスクの前(筆者)〈テヘラン市内〉庫・イラン

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