第3種郵便物認可 し、残り3割以上が産業廃水によるものとみられている(JICA、DEMS、2004-2005年調査報告)。その後の同国環境省の環境年報によると、全国の水質環境基準の不適合率は2008年度が64%、2013年度は80%を超え、特に都市地域の河川の汚濁が進んでいると報告されている。3)湖沼の水質調査 環境省は2013年度の全国6湖沼の水質検査を行い、すべての湖沼は高い栄養塩濃度を示している。これらの富栄養化された水域では、藻類のブルーム(急激で大量の藻類の増殖)が引き起こされ、無酸素水塊が発生し、魚類の生息環境が脅かされている。3.インドネシア政府の対策 インドネシア政府は、こうした各種予測や警告を受けて、ジャカルタ市内の洪水対策として雨水排除用下水管や排水機場の整備、2014年から既存の防潮堤のかさ上げや、さらにオランダ政府の主導でジャカルタ沖に巨大な防潮堤や堰の建設を進めることを決めたが、予算難で進んでいない。 日本政府も2017年、国際協力機構(JICA)が同国の公共事業・水資源総局との調査協力「ジャカルタ地盤沈下対策プロジェクト」に署名し、2020年までに地盤沈下調査や地下水の現状把握、地盤沈下対策のアクションプラン作成などで協力しているが、この間も、地盤沈下は加速している。 下水道対策でも日本政府はJICAを通じ「ジャカルタ特別州下水処理場整備事業・準備調査ファイナルレポート(全247頁)、2013年」で具体的な施策、特にPPPインフラ事業としての展開などを示唆しているが、同国政府、州政府の動きは遅い。 資金難だけではない。ものに動じない国民性もあるのではないか。今までに首都ジャカルタの水没の危機は何度も繰り返し伝えられており、その対策が急務であることを関係者(政府、州当局、市民)は理解、納得はしているが「そんなに心配はいらない」と楽観視していて当事者意識が希薄なことも事実であろう。首都移転の話題は沸騰しているが、具体的な首都移転先の地域名は明らかにされていな▲北ジャカルタ・クラパガディン大通りで非難する住民出所:インドネシア・アンタラ通信(2015 2/11号)▲ジャカルタ洪水対策用排水機場からの巨大放水パイプ出所:Romeo Gacad/AFP/Getty Images 第1898号 令和 元年7月30日(火)発行い。2019年4月29日の同国の閣僚会議では「首都をジャカルタからジャワ島の外に移転する方針を決定」した。しかし今まで歴代の大統領による首都移転構想(スカルノ大統領……カリマンタン州へ移転、スハルト大統領……西ジャワ州へ、ユドヨノ大統領……具体的な地名に言及せず)がすべて水に流された経緯があり、国民が冷めた目で見ており、今回こそ首都移転に進むのか、「地下水問題が首都を移転させるのか」世界初モデルとして今後の動向が注目されている。
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