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SEWグローバル・ウォーター・ナビ イランの核問題を協議していた欧米6ヵ国は7月14日、経済制裁解除に向けて最終合意に達したと発表した。それを受けイランのロウハニ大統領は8月2日、国営テレビに出演「欧米6ヵ国と核問題の解決に向けて最終合意した」、さらに「この協議を始めて2年、期待を大きく上回る進展があった」とも述べた。最終合意の後、ドイツをはじめ欧米諸国は閣僚をイランに派遣し、段階的に解除される経済政策を見越して自国の経済活動を活発化させている。 何しろイランは世界最大の天然ガス埋蔵量を誇り、さらに世界第四位の石油埋蔵量を有している。昔から日本と関係の深かったイラン(1979年まではペルシアと呼称)であるが、日本は米国の顔を見て1993年からイラン向け直接投資をストップしている。筆者は昨年9月イランの首都テヘランに入り、イラン環境省、エネルギー省(水を管轄)、石油省などを訪問、特に水問題について意見を交わしている。将来の水ビジネスの宝庫イランを紹介する。1.イランの水資源 イランは人口7740万人(2013年)でサウジアラビアに次ぐ中東における2番目に大きな国であるタブリーズノウ・シャールテヘランコムケルマーンシャーデズフールアフワーズアバダーンブーシェフルマシュハドダマーバンド山ビールジャンドイスファハーンヤズドシーラーズケルマーンザーヘダーンバンダレ・アッバースアサルイエチャー・バハール第3種郵便物認可 (日本の国土面積の約4.4倍)。国土の55%は海抜300メートルから1500メートルの高度にあり、また国土の90%は乾燥地帯である。年間降水量はカスピ海沿岸の平均2000ミリを除けば、その他の地区は平均230ミリ以下である。しかも降水量の7割は、河川に達する前に蒸発してしまう。イランには6つの主な流域が存在しているが、流域ごとに水資源は偏在している。また季節性が強く雪解け水の多い春先には洪水を引き起こし、夏には枯れてしまう河川も多い。したがって表流水に多く期待できないので地下水への依存度が高く、カスピ海を取り巻く5千メートル級の山々の雪解け水が貴重な地下水源になっている。1)イランの水資源量 水資源量は1,285億m3/年で、表流水は919億m3/年、地下水は366億m3/年であり、年間水使用量は第1799号 平成 27年9月1日(火)発行930億m3/年(日本は830億m3/年)であり、農業用水が92%、家庭用水6%、工業用水2%であるが慢性的な水不足に直面している。 さらに国内の老朽化した水輸送インフラ設備では、約30%の水が失われている。2)イラン水利施設の歴史 イランでは古代から生活用の給水施設や農業向け灌漑施設が発達してきた。イランといえば、地下水を水源としたカナート(地下水路)が有名で3300年前に建設されたチョガ・ザンビールのジッグラトには、給排水システムが完備されていた(1979年、世界遺産に登録)。 さらに要塞都市であったシューシュタルは1700年前に建設され、大掛かりな水利施設が存在している。巨大な貯水池や水道橋、さらに張り巡らされた水路網が都市を支えていた(世界遺産)。 イランの歴史を支えてきたカナートの構造は、山脈の近くに大きな井戸(母井戸)を帯水層まで堀り、そこから数十メートルから100メートル置きに立て井戸を掘り、傾斜に合わせて横水路をつなぎ、都市部まで重力にて配水する地下トンネルである。水路が地下なので太陽熱による蒸発を防ぎ、水関係者と打ち合わせ(左列手前が筆者)イラン・イスラム共和国 地図吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]イラン・イスラム共和国の水事情05

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