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第3種郵便物認可 にはインクライン(ケーブルカー)が設置され、ダム内部はかなり広い監査廊(点検通路)があり、ゲート操作室、計測室、点検用モノレールなどが設置されている。2.日本最大の観光ダム…… 仕掛け人は「竹村公太郎」氏 宮ヶ瀬ダムは1971(昭和46)年より多目的ダム事業としてスタートした。首都圏最大のダム事業は難航する補償交渉を経て、1987(昭和62)年に本体建設工事に着手した。本体建設着手2年前から宮ヶ瀬ダム工事事務所長を務めた竹村公太郎氏(現在、日本水フォーラム代表理事、元国土交通省河川局長)に話を伺った。 竹村氏いわく「当時のダム建設の常識は、『ダム内部に人を入れるなど、とんでもない、できるだけ閉鎖施設を造れ!』だった。しかし、私は『これまで日本にはない開かれたダムを造りたい』と考え、米国のフーバーダム(堤高221m、提頂長379m、貯水容量352億m3)を視察しショックを受けた(注1)。本体の大きさだけではなく、市民・観光客に大きく開かれたダムであった。私は運良く、ちょうど仮設備と本体の詳細設計を任された。何とかして『ダム堤体の中に人を入れて遊ばせよう、日本で一番市民に開かれたダムにしよう』と仲間と知恵を絞った。内部に二基のエレベーターの設置(管理用と観光客用)、工期短縮のためのインクライン(ケーブルカー)は工事終了後、観光客用に転用する。点検通路は、将来の観光客のために広くとる、など観光用に開かれたダム造りに専念した」。〈同僚や部下には、絶対に本省には言うな、「なんでこんなものが要るのか」と必ず反対されるから……完成までかん口令を引いた(笑)〉 竹村氏は、最近のダムマニアが決めた人気ダム評価順位や日経のダムランキングで「宮ヶ瀬ダムが人気ナンバーワン」の報に接し「夢中で設計したダムが、現在、多くの人を引きつけ、ダムを含む水資源に関する話題が人々の間に浸透しつつあることを嬉しく思う」と控えめに語ってくれた。3.水資源の総合運用 宮ヶ瀬ダムのもう一つの魅力は、水資源の総合運用の仕組みである。二本の導水路により水総合運用を行っている。 第1888号 平成 31年3月12日(火)発行 上流の道志ダムからの①道志導水路を経て最大毎秒20m3を宮ヶ瀬ダムに放水、宮ヶ瀬ダムから②津久井導水路を通じ相模川に最大毎秒40m3を放水できる仕組みであり、流域全体の水の総合運用を行っている。さいごに 宮ヶ瀬ダムは、首都圏に最も近く、これからも多くのイベントが開催される。イベントの案内や観光放流などは宮ヶ瀬ダムのホームページで公開されているので、ぜひ名物のダムカレーを賞味しつつ巨大ダムの魅力に接してほしい。注1)フーバーダムは米国で最も人気のあるレクリエーション地域の一つで、昨年は年間900万人の観光客が訪れている人気の高いダムカレー(旗の付いたソーセージを抜くとカレーが野菜の方に流れる)愛川第一発電所 発電機(2万4200kW)ダム躯体内に設置された点検用モノレール

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