主な原因としてハリケーンによる汚染水排出の影響、地球温暖化の影響とか言われているが、毎年変化する赤潮のデータを比較検討第3種郵便物認可 中である。巷のうわさで最も有名なのは、第二次世界大戦終結後、米軍が大量の化学兵器(毒ガス、毒物化学物質)をメキシコ湾に大量投棄し、その毒成分が微生物により生体濃縮され、食物連鎖が始まった説。 最近、最も有力なのは、フロリダ州内の河川の栄養塩類(富栄養化)濃度が、過去30年間で倍増、特に肥料成分が影響を与えているという説である。ではどこから栄養塩類が放出されているのか。同州の環境保護局(DEP)によると農耕地やゴルフ場から年間、窒素として4万4700t、リンは9000t流出と試算しているが、問題はセプテックタンク(腐敗槽)である。セプテックタンク(腐敗槽)の構造例 第1886号 平成 31年2月12日(火)発行処理の大量糞尿がハリケーンなどの大量の雨水により、海に放出されていると最近問題になっている(フロリダ浄化槽協会、タンパベイ・タイムズ)。7.ではなぜ公共下水道の普及率が上がらないのか 公共下水道の負担金は高く、一方セプテックタンク設置費用は約1500~1万5000ドルであり、広い敷地を持つ家では簡単に設置できる。法律で義務づけされている維持管理費も一般家庭で年3~5万円である。 筆者もニューヨーク郊外に住んでいた時に、近くの大邸宅の主人と下水について話したことがあるが、「下水道についての経済合理的な考え方」について驚いたことがある。主人いわく、「下水道を敷設すれば都市化が進み、閑静な住宅環境が損なわれる。ひいては住宅価格の下落につながる。下水道を敷設すれば税金も高くなる。その維持管理費も毎年増えるだろう。セプテックタンクは法律で定められ、敷地内での責任はオーナーにある。敷地内はすべて家主の個人資産であり、個人の責任でやるべきで安易に公共に頼るべきではない」と金持ち論理を聞かされた。(出所:環境省Webサイト)カレニア・ブレビスの濃度変化(夏季:2018年7月8日~7月31日、出所:Florida Fish and Wildlife Conservation Commission)4.ハリケーンと赤潮の関係 赤潮を防ぐには主原因と思われる栄養塩類を海に入る前に除去することであるが、下水処理場に入る汚水成分は、かなり除去できるものの、平野や農場からハリケーンによる雨水(洪水)とともに排出される排出源(ノンポイントソース)は対策が難しく、海に直接放流されている。例えば2004~2005年にかけフロリダは多くのハリケーンに襲来され、平地や農地の多くの栄養塩類・肥料等が湾に放出された。その影響により2005年の赤潮被害は17ヵ月にわたった。また2017年の大型ハリケーン・イルマではさらに大量の栄養塩類をメキシコ湾に流入させ、今回2017年10月から連続して2年にわたり発生している赤潮は、320kmに及ぶ海岸線を汚染している。5.赤潮の原因は……セプテックタンク(腐敗槽)も一因6.セプテックタンク(腐敗槽) 同州の公共下水道は4100ヵ所あり、下水道普及率は約75%(全米平均数値と同じ)である。従ってフロリダ居住人口(約2027万人)の三分の一近くはセプテックタンク(腐敗槽、BOD除去率約50%)で汚水を処理している。セプテックタンク(腐敗槽)の総数は約270万台であり、嫌気性発酵後、地下浸透させ処理をしている。つまり敷地内に埋設されているセプテックタンク(腐敗槽)内の未
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