第3種郵便物認可 年間3900万m3の生下水をテムズ川に放流した水質汚染の罪である。2017年3月、テムズ川の水質汚染でバッキンガム州のアリスバーリー刑事法院から20百万ポンド(約30億円)の罰金、さらに同年6月にOFWATより8.5百万ポンド(12億7500万円)の罰金などが科せられている。 「OFWATよくやった」と称賛したいところだが、冷静に考えるとテムズ社や規制機関が長年かけた査定作業や報告書作りにかけたコストは、最後はすべて上下水道料金値上げに撥ねかかってくるのである。4.日本の水道民営化に向けて まずは日本の上下水道事業の現状を直視しなければならない。山積みの課題を解決するためには「国民の命を守る上下水道事業は、誰がやっても料金を2~3倍に上げなければ成り立たない事業である」今、その値上げ幅をいかにミニマムにするのかである。 政府がもくろむコンセッション方式にしても、いままで官側が極力避けてきたファイナンス力(20~30年の契約期間の資金調達力と履行能力)、さらに相互のリスクマネージメント能力(特に巨大災害時の対応策など)が問われている。つまり上下水道事業に長年の経験がありファイナンス能力のある大企業しか参加できない構造である。水メジャーのスエズ社が再上陸してきたのも理解できる。日本版コンセッションの導入にあたっては英国の仕組みを参考にして日本独 第1882号 平成 30年12月4日(火)発行自の視点(水災害、地震対策、人口減少による統合・広域化など)を織り込み、必ず独立した監査機関を構築すべきであろう。◦水みらい広島方式に学べ 給水人口が少ない自治体は、コンセッションの対象にならない。最近注目されているのは、「水みらい広島」方式である。水処理大手・水ing社(65%出資)と広島県(35%出資)で設立された水道事業会社である。県の出資でガバナンスも確保し、自治体に信頼感を与えている。その経営方針は「地域と共存共栄し、水の未来を創造する」である。2012年設立で現在社員は約160名、ほとんどが地元採用者であり、先の広島豪雨災害には、東京本社の支援を受け24時間体制で臨み、浄水場の復旧はもちろん、被災地での給水作業も行い呉市や三原市から感謝されている。また「水みらいカップ少年野球大会」も第三回を数え、若者への水の啓蒙と地元貢献にも尽くしている。 詳しくは12月12日参議院議員会館で開催される「水の安全保障戦略機構・第16回基本戦略委員会」で三島浩二・水みらい広島代表取締役社長から発表される予定である。OFWATによる規制の枠組み3.テムズ社へ罰金120百万ポンド(約180億円)……OFWATから支払い命令 2018年6月OFWATはテムズ社に対し罰金(約180億円)支払い命令を出し、テムズ社はその支払いに合意した。その理由は年次報告書(2016/2017)で約束した漏水率の15%改善目標(1億7千万m3/年)を達成できなかったからである。 また罰金の半額約90億円は顧客に返還することにも合意した。その和解案としてテムズ社は、今後2億ポンド(300億円)を投入しビクトリア時代に敷設された水道管を更新する計画を打ち出している。 しかし道のりは険しい。特にロンドン地区の配管本管は老朽化が激しく、敷設後100年以上経過したものが二分の一以上、さらに全体の三分の一は150年前以上のビクトリア王朝時代に敷設されたものである。漏水率は25~40%(無収水率を含む)であり、いつ破断してもおかしくない状態に直面している。さらに水道メーターが設置されている世帯は、わずか28%(2007年)から約40%(2017年)と遅々としたメーター設置状況である。水道メーターのない消費者への水道料金は固定制であり、水を有効に使おうとするインセンティブが全く働いていない状況である。つまり消費者にしてみれば固定料金を払えば水は使い放題である。テムズ社にしてみれば、民営化前の「官の無為無策のツケをすべて被らせられた」状況である。◦下水処理でも罰金 テムズ社は下水処理でも多額の罰金を支払っている。テムズ社の運営するベクトン下水処理場から
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