SEWグローバル・ウォーター・ナビ 持続可能な開発目標として国連サミットで採択された「SDGs:Sustainable Development Goals」は新しい世界のモノサシとも言われている。2030年を期限とする17の目標(ゴール)の達成に向け世界各国が取り組みを進めている。以前のMDGs(ミレニアム開発目標)は2000年に定められ、主に発展途上国が抱える問題をいかに解決するか、いかに先進国が途上国を支援するかが定められていた。今回提唱されたSDGsは「持続可能がメインテーマ」でありすべての関係者、先進国や発展途上国が共有するもので、世界各国はこの目標にそって「持続可能な社会構築」にシフトしていくことになる。SDGsで水項目として「安全な水とトイレを世界中に」(目標6)がうたわれているが、これは狭義の解釈である。水は17目標すべてを支える極めて重要な位置を占めている。つまり「水がなければ、17目標は達成されない」とも言える。では17目標と水との関係を「我田引水」的に解釈してみたい。1.貧困をなくそう 貧困の始まりは、水がないことから始まる。身の回りに安全で十分な水資源があれば、生活だけではなく、農業が可能になる。世界文明がチグリス・ユーフラテス第1880号 平成 30年11月6日(火)発行 川、ナイル川、インダス川、黄河から始まったように、水が生命を支え、生活ができ、農耕ができれば、貧困が撲滅できるのである。2.飢餓をゼロに 飢餓は食糧不足から始まる。水さえあれば農業が可能だ。最近は地球温暖化現象で洪水と干ばつが多発している。水資源は必要な時に、水量、水質が確保されなければならない。水インフラ(ダム、貯水池、水路、維持管理)の整備が飢餓をゼロに近づけるだろう。3.すべての人に健康と福祉を 身の周りに安全な水がないと、水が媒介する病気にかかるリスクが増大する。いうまでもなく水道普及の第一目標は公衆衛生の確保であった。中世ヨーロッパでは黒死病(ペスト)で欧州人口の1/3が減少した。日本においても海外から持ち込まれたコレラが流行したのが文政5(1822)年と安政5(1858)年で江戸だけで死者10~26万人が出たと言われている。健康と福祉を支える水の供給は近代においても、益々重要な位置を占めている。4.質の高い教育をみんなに アフリカをはじめ、中南米でも特に女性や子供たちが毎日水汲み、水の運搬に人生の大半を費やしている。家と水源(安全でない水が多い)を数時間かけて往復するために教育の機会、仕事の機会を失っている。その地域に共同水栓でもあれば婦女子に教育の機会が得られるのである。5.ジェンダー平等を実現しよう 目標4で述べたように水汲みの主役は女性である。水汲みの仕事を減らせば、女性の教育、雇用の増進が図られジェンダーの格差解消となる。6.安全な水とトイレを世界中に 2000年のミレニアムサミットで提唱されたMDGs「安全な飲料水と改良された衛生施設(例えば衛生的なトイレ)を利用できない人を半減させる」という数値目標は達成されたが、それでも未だに世界人口の10分の1の人が安全な水へのアクセスができていない。例えば筆者は本年5月にインド訪問したが、同国の携帯電話の普及率は約55%だが、家庭内トイレの設置率は4割以下であり、特に若い女性や子供たちが身の危険をさらしながら野外排泄を続けざるを得ない状態が続いている。7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに エネルギーと水との関係を歴史的に考えると、まずジェームスワットの蒸気機関である。ここから産業革命がはじまり、エネルギー消費が急拡大した。水力発電、いまや再生可能エネルギーとして再び注目を浴びている。もちろんバイオマス資源利用も水がなければ成り立たない。火力発電所・原子力発電所では純水装置、復水脱塩装置、冷却水装置が重要な施設であ第3種郵便物認可吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]水が支えるSDGs17目標42
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