SEWグローバル・ウォーター・ナビ1.インドの水資源問題 インドの面積は世界の2%しかないが世界人口の15%はインド人。しかしインドは世界の水資源の4%しか保有していない。インドの水(表流水、地下水)は8割が汚染されている。世界で最も劣悪な水を飲まざるを得ない国である。 水資源、インド全土の年間降水量は約4000km3であるが、雨季(6~9月)の3ヵ月間に集中し、利用可能な水源は690km3しかない。また降水量は各州により大きく異なっている。地下水汚染も深刻である。同国の地下水くみ上げ量は、2014年現在で251km3、G20加盟国の中で最も多く、2位の中国の2倍以上である。過剰くみ上げで水位が急激に低下していると同時に水質汚染が進み、処理なしでは飲用不可である。同国の調査(2014-2015CGWB)によると有機物汚染(BOD、COD他)に加え、フッ素汚染(20州で276ヵ所)、ヒ素汚染(10州で86ヵ所)、重金属汚染(15州で113ヵ所)、鉄汚染(1.0mg/L以上、24州で297ヵ所)も深刻である。6月には米国の調査チームから16州での地下水ウラニウム汚染(WHO基準:16µg/L)地区が37ヵ所あると警告されている。第1873号 平成 30年7月31日(火)発行 か直接税(所得税)を納めていない。年間所得25万ルピー(約42万円)以下には所得税が課税されない、インド国民の9割以上が、この所得水準である。 2014年に発足したモディ政権はインフラ投資には国際金融機関や先進国政府の援助資金、外資系企業の投資を働きかけている。日本政府からインド政府への円借款は総額3841億円(2017年)を超え、一国に対する日本の供与額として過去最高を更新している。 しかし、その投資先も高速鉄道、通信、エネルギー(原子力)が主であり、水インフラは最後である。 今、水ビジネス関係で伸びているのは、民間企業によるボトル水販売で2014年の約340億円市場が2018年には3倍以上の1100億円に達するとみられている、それに続くのは産業廃水処理、水の再生水処理などである。インドの水処理プラントビジネス市場で活躍している企業、外資系では水メジャーのスエズ、ヴェオリア社、国内大手企業ではDoshilon、Driplex、Themax、Va Tech社などで、彼らが市場の約30%を占め、600社以上の国内中小企業が残り70%を抑えている(シンガポール・シンシア社調査)。第3種郵便物認可アンナ大学(チェンナイ市)で講演(筆者)2.インドの水ビジネス市場 英国の調査会社などのデータによると2400億ルピー(約4080億円、2018年)とみられ、浄水処理(生活用水、工業用水、浄水場)と排水処理(下水処理、産業廃水処理、再生水処理)で各々2000億円前後、水処理膜市場(RO、UF、MF膜)は193億ルピー(約320億円)とみられている(フロスト&サリバン調査)。 相対的には今後数年間で10~15%成長すると見込まれている。しかし、この中で公共(国または州政府)がやるべき水インフラ関係の市場が期待できない。なぜなら国に資金的な余裕がまったくない。その理由は、統計に載っているインド人口12億5千万人のうち、約1900万人(国民の1.5%)し吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]インドの水資源と水ビジネス事情39
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