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EWSグローバル・ウォーター・ナビ フィリピンのドゥテルテ大統領は世界的に有名なリゾート地・ボラカイ島を4月26日から半年間閉鎖しすべての観光客を締め出すことを命じた。島内では、500以上のホテルや観光施設から無処理の下水・汚水を海へ垂れ流す違法行為が横行し、その結果、島周辺は「汚水のたまり場」と化している。同大統領は以前から「ボラカイ島は汚水のたまり場」と汚水管理の不手際を非難し、閉鎖も示唆していた。剛腕で知られるドゥテルテ大統領の直命によるボラカイ島の期限付き下水問題解決に世界の注目が集まっている。1.リゾート地閉鎖に機動隊を配備 26日からフィリピン政府はボラカイ島に小銃を携帯した機動隊員約600人を配備し、観光客の立ち入りを禁止した。さらに島内の不満分子の取り締まりに138人の警察隊を増強し、島の海岸から3km以内の海域への船の進入も禁じられた。 突然の大統領命令によるリゾート地の閉鎖には、当然のことながら反発する声も出ている。島内組織「ボラカイ団結」や観光組合(TCP)、商工会議所は、強制的第1869号 平成 30年6月5日(火)発行 な閉鎖手段を取らなくとも、住民自身が島の再生や再建に当たることができると主張、島からの観光客排除は、島で働く住民の生活を破壊し、国の観光政策を苦境に陥れ、さらにフィリピンの世界的な評判を損ねると強調している。ワンダ・テオ観光相はテレビのインタビューで「半年間、島を完全閉鎖し、900以上の違法建築物の撤去・処分、廃棄物管理の改善、下水や汚水システムの改善や拡張に取り組み、迅速に清掃し半年後にリゾート地を再開したい」と述べた。2.ボラカイ島は貴重な観光資源 ボラカイ島はフィリピンにとり貴重な観光資源で、パナイ島北西部に浮かぶ長さ7kmの細長い島である。4kmに及ぶ白砂ビーチと透明度の高い海が有名で、世界の最良ビーチ・コンテストでも常に上位に選ばれている。昨年島を訪れた観光客は約200万人に達し、その経済効果は560億ペソ(約1156億円)と試算されている。3.水質汚染問題 トロピカル・ビーチ・ハンドブックで「世界最高のビーチの一つ」(1990年)と称され、その後ボラカイ島には、電気と水道がパナイ本島とつながり、国際的な観光地として発展していった。有名になるに連れ、急増する観光客の受け入れで無秩序な土地開発、違法な建築、用途規制の無視が横行し、特に汚水の垂れ流しや廃棄物問題(丘陵部にはごみが山積み)など環境問題が深刻化していた。リゾートを代表的する全長4kmに及ぶ白砂「ホワイトビーチ」は島の西側にあり、住宅やホテル、商業施設の95%が西側に集中している。◦水質汚染の実態 下水や汚水の放流先は、島の東側でウインドサーフィンやカイト第3種郵便物認可フィリピン・ボラカイ島位置吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]37比・ボラカイ島リゾート下水問題で強制閉鎖

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