GWN1-50
101/132

トランタ) さらに共通するのは、契約途中の解約も多く、水道事業の経験豊富な都市が多い。つまり民間業者に賠償金を支払っても、再公営化することが、市民に廉価で安全な水道水を供給できることを再認識した都市である。 最近の大きな話題はインドネシアの首都、ジャカルタ水道の再公営化である。途上国の民営化は、いかに時の権力者と密接であったかが判る例で詳述する。2.ジャカルタ水道・民営化の歴史 90年代、ジャカルタ水道公社の民営化路線に興味を示したのが、イギリスのテムズ社とフランスのスエズ社であったが、いずれも水道関係の既得権者(公共事業省、ジャカルタ州政府、水道公社職員)が民営化に強く反発した。そこでテムズは1993年、財務・経営管理第1864号 平成 30年3月27日(火)発行 業務を英・テムズ側が管轄することを条件に、スハルト大統領の長男(シギット・ハルヨユダント)に対し新たに設立した水道会社の株式の20%を譲渡。一方スエズ側はスハルトに近い華人系実業家スドノ・サリムに共同事業の提案をし、その事業株式の40%をスエズに移譲することが約束された。問題はテムズもスエズも、ジャカルタ水道を独占する戦略であったが、両方ともスハルトの息のかかった出所:(1) The Indonesian Drinking Water Association (Perpamsi) 2013;(2) TribunNews 2013;(3) Department of Public Works 2013;(4) Perpamsi 2010;(5) Malang Drinking Water Company 2015;(6) JPNN 2013.インドネシア/都市・水道事業比較経営平均水道料金ルピア/m3都市名スラバヤパレンバン公営公営バンジャルマシン公営公営公営民営メダンマランジャカルタ●浄水場●1954年デグレモン(スエズ)建設●アクセレータ(凝集沈殿)、ろ過方式●老朽化が激しい企業同士、一つのパイを巡る争いになり、スハルトファミリーの関係悪化になる恐れであった。そこでスエズ側は、パリやマニラでの事業区域の分割例(パリはセーヌ川で分割、マニラは東と西に分割)を提案。結局ジャカルタの水道事業はチリウン川で分割(西側:スエズ、東側:テムズ)されることになった。1)そこで何が起きたか スハルト政権下でジャカルタの漏水率(%)2,8003,8004,1202,2264,0007,800343026243044サービスカバレッジ(%)87939866.628059.01第3種郵便物認可PALYJA/ジャカルタ水道施設(右写真の右から3人目が筆者)

元のページ  ../index.html#101

このブックを見る